Tobira Records in store showcase vol.26 プログラムノート

Tobira Records in store showcase vol.26

Aug 28th 2022 テーマ

テーマ : “夏の風“


<プログラムノート>

①“4'33"

アメリカの作曲家ケージの作品。1952年作曲。4分33秒の間ピアノの前に普通に座り、ピアニストはなにも弾かず、取り巻く環境の偶発的な音が曲を決めるというもの。

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“4分33秒”でスタート

ピアノの演奏では蓋を使い終始を表していますが、私は同じ意図で風鈴を鳴らすことにしました。

また、そこで生まれる日常音に加えて、蛇腹から生まれる風の音と、私がこの夏、日常の中で”風“ を感じた瞬間にiPhone で記録した様々な風景の音をサンプルにして、コラージュ的に演奏しました。

”風”をテーマにした音楽を考え出してから、毎日、より、風の音やそれと共に取り巻く夏の音が聴こえるようになりました。

身体に当たる風を感じて、心地良く感じさせてくれることが多くなりました。また、風の日の思い出が頭をよぎることもありました。

“風”から行き着いたところは“存在感”でした。

風鈴は、まさに、暑い夏であっても涼やかな”風“の存在に気づかせてくれる心地良い音楽。聴くことで音楽が生まれる曲の一部として演奏しました。


②風色(hushoku)-ライブバージョン-

”夏の風”をテーマにした、ライブのためのオリジナル曲。

一つ前の”4’33”の曲でも使用した、iphonで記録した様々な風景のサンプル音源のコラージュに、”存在感”からイメージされる音源を重ねて作曲。メロディーには、この後に演奏されるバッハの無伴奏チェロ組曲第1番のモチーフにした電子音でのアレンジを演奏し、レコーディングしました。

ライブでは、この音源に重ねて、エフェクターを使用したアコーディオンでの即興演奏。

インストアライブならではの、距離の近さ、小さな空間での響きの中で、最初に出すアコーディオンの音色として、シンプルに音を響かせるイメージと、アコーディオンのルーツを遡った最初の楽器と言われる、笙(しょう)の演奏を意識したメロディで演奏しました。


③“無伴奏チェロ組曲“ 

J.S.バッハ作曲によるチェロ独奏用の楽曲。

長らく練習曲とされてきたが、スペインのチェロ演奏家カザルス(Pablo Casals/Pau Casals/1876-1973)により再評価され、チェロ定番曲として定着した。

今日では、「チェリストのバイブル」的な楽曲で、「チェロの旧約聖書」とも呼ばれる。

第1番から第6番までの全6曲の組曲から成り、組曲ごとにひとつの調性で統一されている。

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最初に表現した風景のBGM的な曲として繋げることと、そして、始まりのソロのアコーディオンとして、シンプルなバッハの曲の旋律を選びたいと考えました。

まずは自然が生み出す音のバランスに、最も相性が良いと感じるという点。そして、私が師事したオルガニストの酒井多賀志先生の研究から、バッハの音楽の数学的な美しさの中に黄金比(自然の中に存在する美しさの対比)との関わりがあるという説を思い出し、自然の美しさと共に美しい旋律を繋げました。

誰もがどこかで耳にしたことがある有名なこの旋律に、夢心地な空気感を出すために、エフェクターを使用し、演奏しました。

ノイズ音はこの日のトラブルですが、演奏は止めずに、古い映像のような音色として弾くことにしました。


④夏の風(the summer wind )

”夏の風”をテーマにした、ライブのためのオリジナル曲。

アコーディオンの、音を鳴らす意外に蛇腹のみを動かすためについている空気抜きボタン(エアボタン)

エを奏法に用いる曲を作りました。

エアボタンを押したまま蛇腹を動かし、同時に鍵盤で演奏する方法を考えました。

風の音を演奏の一部にして、蛇腹の風の音を消してしまわないような音色で、シンプルな曲を作りました。

ライブではノイズ音のトラブルがあったので、レベルは低めにしましたが、繊細な音を響かせるために、

マイクで音を拾い、エフェクターを使用しました。

次に演奏するオリジナル曲”流れ”へ繋げる、イントロの役割も兼ねての演奏です。


⑤流れ(Nagare)

2017年作のオリジナル曲。

儚さの中に存在する心に残る美しい瞬間や、古事記に登場する「木花咲耶姫(このはなさくやひめ)」から着想を得た作品。

原曲は、日本の桜の風景を物語の始まり、終わりに表現するため、東洋音楽の要素を和声や奏法に取り入れていますが、ライブのテーマと世界観を繋げるためにイントロをオリジナル曲”夏の風”に変えることにしました。

桜の花びらが舞う春の風のイメージから、緑の葉が揺れる夏の風へ。

そして、満開の桜や神話に出てくる女性の、狂気じみた美しさとは別の、風=存在感、記憶という物語のテーマで演奏しました。

記憶の中のカオスのような、現実離れした世界観のためにエフェクターを使用する予定でしたが、ノイズ音のトラブルのため、この曲以降は生演奏でのライブに変更してラストに繋げました。


⑥即興演奏

オリジナル曲”流れ”から、オリジナル曲”夏の呼吸”に繋げる即興演奏。

流れのエンディング部分のメロディーに即興を交え、イントロに使用した”④夏の風”のメロディーを再度使用し、”②風食”でのインプロと同じく、アコーディオンのルーツを遡った最初の楽器と言われる、笙(しょう)の演奏を意識したメロディ。

サンプラーなどはなくアコーディオンのみのインプロなので、構成は考えすぎず、瞬間の空気と感覚に任せて

演奏しました。


⑦夏の呼吸(summer breath)

2005年作のオリジナル曲。

“夏の呼吸”をテーマにしたストーリーリーディングのための作品。

朗読のBGMにオルゴールの音色で作った曲のアコーディオンバージョン。

もともとセットリストに入っていませんでしたが、ライブ中の空気に合わせて、生音で演奏しました。



⑧即興演奏

オリジナル曲“夏の呼吸” の演奏中に、そこで感じている空気でそのまま即興演奏することにしました。

演奏に続く形で、伴奏を続けながらメロディを変えてラストにしました。


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